私の理想の王子様
「実はこの週末、店舗でもこのSNSが話題になったみたいで。間宮さんが、自分がメイクした朝子さんだって言ったらしいんです」

 遠慮がちに声を出す智乃に、朝子は静かに目を閉じる。

 間宮の反応は間違っていない。

 だってこの写真は、実際に間宮に男装メイクをしてもらった時の朝子だ。

 そして理想の王子様になりきり、見知らぬ人のスマートフォンに笑顔を見せたのは朝子自身なのだ。


(まさかSNSに投稿されてたなんて……)

 朝子は智乃からスマートフォンを受け取ると、画面をスクロールさせる。

 写真は他にも投稿されていて、どうも街で見かけた王子様風の一般人をUPしているらしいが、いわゆるバズった投稿は朝哉のものだけだった。

 朝子は記事をタップすると、投稿についたコメントを表示させる。

 大半は『まさに理想の王子様!』『イケメンすぎる!』という単なる感想だったが、中には朝哉の性別を疑問視するコメントもあった。


 そしてさらに画面をスクロールさせた朝子は、一部のコメントに目を疑う。

『私この人知ってる! 異業種交流会に来てるアサヤ君だよ』

『この人に振られたって、泣いてる子がいたよ』

『いやいや、そもそも性別どっちよ?』

 そのコメントを読んだ途端、朝子は呻くような声を漏らしながら天を仰ぐ。
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