私の理想の王子様

はじめましてのやり直し

 定時になり会社を後にした朝子は、駅の改札を抜けるとスマートフォンの画面をタップする。

(二人にぶつかってみるとは言ったけど、どうしたらいいんだろう)

 朝子はミチルの連絡先は知っているが、須藤の連絡先は知らない。

 そもそも、どこの企業で働いているかすらも知らない須藤に、どうやって会えばいいのだろう。


 スマートフォンを握り締めながら、ホームを歩いていた朝子は、ふと自分の前で止まる革靴が目に入り、ぴたりと足を止めた。

 綺麗に磨き上げられた靴からふと視線を上げた朝子は、コートを羽織ったスーツ姿のその人の顔を見て息を止める。

「……どうしてここへ?」

 朝子の前でにっこりとほほ笑んでいるのは須藤だ。

「君を待ってたんだよ。えっと……朝……」

「朝子……朝子です」

「そう。朝子ちゃん」

 須藤は再びほほ笑むと朝子の前に顔を覗き込ませる。

 朝子は真っ赤になった頬を隠すように、慌ててそっぽを向いた。


「須藤さんらしくないですね。いつも女性に追いかけ回されてるのに、張り込みだなんて」

 わざとらしく口を尖らせる朝子に、須藤は楽しそうにあははと声を上げる。

「張り込みね。確かに、俺らしくないって思ったんだけどね。朝子ちゃんに会いたくて待ってたよ」

「私に……?」

 にっこりとうなずく須藤は「少し話せるかな?」と言いながら歩き出した。
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