私の理想の王子様
 朝子はドギマギとする心臓を落ち着けるように、ゆっくりと須藤の背中を追う。

 街を行く女性たちが振り返る中、須藤は朝子にこっちと指さすと、チェーン店のカフェに入った。

「ホットでいい?」

 須藤はそう聞くと、朝子に先に席に座るように促す。

 全ての動きがスマートで、やはり須藤は相当モテるのだろうと思った。


 「そういえば、怒ってる?」

 しばらくして、須藤は蓋つきの紙カップに入ったコーヒーを二つ持って戻ってきた。

「な、何をですか……?」

 朝子はホットラテと書かれたカップを受け取ると、ドギマギとしながら声を出す。

 須藤は一口コーヒーに口をつけた後、悪戯っぽく顔を覗かせた。

 「強引にキスしたこと」

 須藤の言葉を聞いた途端、朝子は「あちち」と飲みかけていたコーヒーから慌てて口を離した。

 須藤はあははと楽しそうに笑っている。

 朝子はそんな須藤を恨めしそうに見ながら、小さく口を開いた。


「どうして……キスしたんですか……?」

「どうしてって、朝子ちゃんにキスしたかったからに決まってるじゃない!」

「も、もう! 真面目に答えてください!」

 茶化したように言う須藤に、朝子はさらに顔を真っ赤にする。

 でもしばらくして、須藤は真面目な顔つきをすると、真っすぐな視線を朝子に向けた。
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