私の理想の王子様
「じゃあ、見てもらうっきゃないですよ! 朝子さん、自分の壁を乗り越えるんです」

「え? 壁……?」

「そうです。色んな障害があるからこそ、私たちは輝ける。そう思いませんか?」

 くすくすと笑う智乃を見ながら、朝子は自分の中でやっと心が定まった気がしていた。

 須藤やミチルから逃げるのではなく、ちゃんと本来の自分として二人に向き合おうと。


『みんなの王子様じゃなく、本当の君に戻って向き合うんだよ。そうすれば、今君を覆っている感情から先の道が開けると思うよ』

 その時、須藤の言葉が浮かぶ。

(あの時、須藤さんが言ってた事って、そういうこと?)

 須藤は全てをわかった上で、朝子に本来の自分になれと言ったのだろうか。

 そして壁を乗り越えた先に、本当の自分が見えてくると。


(私、ミチルさんに本当のことを言って謝ろう。そして……須藤さんに、自分の気持ちを伝えたい)

 朝子は智乃の手を握り返すと、ぎゅっと力を込めながら大きくうなずいた。

「ありがとう。私、本当の自分の姿になって、ぶつかってみる」

「それでこそ、朝子さんです」

 朝子はくすくすと智乃と笑い合うと、胸を張ってフロアに戻ったのだ。
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