私の理想の王子様
「朝子がみんなに教えてあげるんだよ。誰でも王子様になれるんだよってことを」

「誰でも王子様に……?」

「そう。なりたい自分になれるんだって伝えられるのは、朝子なんじゃないかと思うよ」

 朝子ははっと息を飲む。

 須藤はきっと朝子の背中を押してくれている。

 朝子が本当は新プロジェクトに挑戦したいと思っていることを、須藤はわかっているのだ。


「でも……」

 朝子が小さく声を出すと、須藤は身体を起こして正面に向き直った。

「朝子、自分がやりたいと思ったことから目を逸らしちゃだめだよ。それは必ず後で後悔につながる。うまく行かなくなった時の、理由にしちゃうんだよ」

「瑛太さん……」

「朝子はみんなを騙したことを気にしてるみたいだけど、もう誰もそんな事思ってないよ。ミチルちゃんだってそうだったでしょ? 朝子は何をそんなに気にしてるの?」

 須藤に顔を覗き込まれ、朝子はゆっくりと自分の気持ちをはじめから辿ってみる。

 朝哉がSNSで話題になった時、周りから好奇の目で見られたり、その性別を揶揄されたことがパッと頭に浮かんだ。


(あぁ、きっと私は怖いんだ……)

 自分は騙されたと言われることが怖い。

 そして自分が原因で、自分の周りにいる須藤や由美や他の人を傷つけることが怖いのだ。
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