天使と悪魔~私、ヤクザの愛人になりました~
「京子姉ちゃん!今日も僕に特訓してくれる?」

「いいけどまずはご飯だぞ。にんじんは食べられるようになったか?」
「僕、頑張って食べるもん!強くてかっこいい男になるんだ~!」


そう言って息吹が走っていきます。天国の家族にも息吹の元気な姿を見てもらえていると思うと幸せな気持ちになります。


「天、つわりとかは大丈夫?息吹の時は結構辛かっただろ?」
「たまにありますけど、つわりがあるのはこの子が元気に大きく育っている証拠です。立派に産んでみせますからね。」


「また天の子供が生まれるのか~……なんだかおばさんにでもなった気分。私も亜魔野組に組入りしたようなもんだから実家には帰りづらいし、天たちを見て家族を楽しむよ。」


「京子さん、これ読んでください。」


そう言って京子さんに何枚もの封筒を渡しました。京子さんが亜魔野組で生きると決めてくださった時からずっと貯め続けていたものです。


「この手紙は私が京子さん……そして光さんのご両親とやりとりしていた手紙です。私はお2人からご家族のことをお聞きしたことがなかったので、どうしてもご挨拶をしたくて手紙を書き続けました。最初はなかなかお返事がいただけませんでしたが、お2人の様子を書いたら、『元気にしていますか?』『立派に仕事をしていますか?』と、たくさんのお声をいただきました。私にはもう両親はいません。だからこそ、京子さんと光さんにはご家族と疎遠になってほしくないんです。今は極道の世界で生きる身だとしても、いつか『ただいま』と帰れる場所であってほしいんです。」



私はずっと舎弟の皆さんのことばかり考えていました。ですが京子さんや光さんのことも大切な家族だと思っています。いつも近くにいてくださって、守ってくださって……感謝しても足りないくらいの恩を受けています。



「うわ、結構前から手紙のやり取りしてたの?これ、2年前……?よく続けたね。」


「私は皆のお母さんです。誰一人欠けることなくしっかりといつも見ています。今までは守られることばかりでしたが、これからは私が皆さんを守っていきます。それが私が選ぶ未来です。」


「天のたくましさはすごいな……。何歳になっても、おばあちゃんになってもずっと天の傍にいたい。この組を守り続けていきたいよ。」



あの日、心さんと出会わなければ今の私はいませんでした。亜魔野組に入ったから得たもの、失ったもの……それぞれたくさんありますが無駄だと思ったことは一つもありません。



「なんかさ、亜魔野組って不思議だよね。非道で悪魔のようなヤクザだと思ったら、天使のような優しさも持っている。それはきっと天が組の皆に与えてくれた恵なんじゃないかな?天は天使、心さんは悪魔……対になる存在だからこそ今の亜魔野組を作り上げることができた。それってどんなことよりも凄いと思う。」



これから先も亜魔野組が悪魔のような存在なら私が光を与えて天の恵みを授けます。居場所がない人や困っている人を助けられるような家族のように温かい存在。



あの日、心に決めたたった一つの誓い。



この誓いを胸に、毎日一歩、一歩と進んでいきます。




明るい未来へと……





―完―
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