Good day ! 5
コックピットで四人で食べるミール。

コーヒーを飲みながらのおしゃべり。

翼と舞が大和に尋ねる操縦。

そして四人での笑顔の記念撮影。

愛おしく大切な瞬間は、いつしか終わりに近づく。

羽田空港に向かって高度を下げ始めると、キャピンで佐々木がアナウンスを始めた。

「皆様、当機はこれより羽田空港へ向けて最終着陸態勢に入ります。どなた様もシートベルトを腰の低い位置でしっかりとお締めください。また本日の機長、佐倉 大和キャプテンは、このフライトを持ちましてコックピットを離れます。総飛行時間は21,255時間。およそ2年半もの時間を空の上で過ごしたことになり、総飛行距離は地球およそ452周分に相当します。我々日本ウイング航空が誇るグレートキャプテンのラストフライトを、皆様に見守っていただけますことを、クルー一同心より感謝いたします。ありがとうございます」

大きな拍手がコックピットまで聞こえてきた。

大和は恵真に、優しく笑いかける。

「行こう、恵真」
「はい」

二人でしっかりと頷き合い、前を見据えた。

「Approaching minimum」
「Checked」
「Minimum」
「Landing」

そう、これは長い長いパイロット人生の終着地点。

無事に下りよう。

たくさんの幸せと思い出を乗せた飛行機と共に。

『One hundred』

自動音声が地上までの高度をコールする。

それは大和自身へのカウントダウン。

『Fifty, Forty,Thirty,Twenty』

そして……

『Ten』

コツッとかすかな音を立てて、大和は軽やかに地上に下り立った。

スピードブレーキ・レバーの位置を確認した恵真が「Speed brakes up」とコールする。

大和はスラスト・リバーサーを作動させた。

「Reverse normal」

機体は一気にスピードを落としていく。

「Sixty knots」

恵真のコールに、大和はゆっくりとレバーを戻した。

誘導路を通り、スポットへと続く直進路に入った時だった。

控えていた消防車が、機体の上を目がけて一斉に放水するウォーターサルートで出迎えた。

水のアーチに、きれいな虹が架かる。

大和はその下をくぐるように機体を進ませると、やがてゆっくりと停止させた。

両方のエンジンをカットオフし、コックピットは静寂に包まれる。

合図を送っていたマーシャラーが、深く長く腰を折って、大和に敬意を表した。
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