新堂さんと恋の糸
「そもそもの質問をするけど、何で俺なの?」
「……え?」
「デザイナーなら他にもいる。顔出しも取材も避けてる人間より、撮影もインタビューも喜んで受けるやつはいくらでもいる」
淡々とした口調だけれど、その視線はまっすぐだった。
「目的は何?誌面を埋めたいだけなのか、編集者としての実績づくりなのか。それとも、他に理由がある?」
「ち、違います!」
「じゃあ何で?」
矢継ぎ早に質問されて、私は戸惑う。
私はもともとインテリアのカタログやデザイン誌を見るのが好きだった。
実家が代々続く古い日本家屋だったせいもあって、思春期の頃にそういった『おしゃれなもの』への漠然とした憧れがあったからかもしれない。
一度はその道に進むことも考えたけれど、私には絵やイラストのセンスが壊滅的になかった。
好きなだけではやっていけない世界――センスのある人たちが集まる中でやっていける未来が、どうしても描けなかった。
進路に悩んでいるときに出会ったのが、新堂さんが受賞した作品だった。
スチール製のチェアの中に日本の伝統工芸をミックスした、既存にとらわれない美しいデザイン。
ネットニュースで見た記事に、私は釘付けになった。
けれど、私の周囲の反応は『誰?』『どこがすごいの?』ばかり。
私が受けた衝撃や感動が伝わることはなかった。
――こうやって活躍している人を知ってもらいたい。自分の言葉で、多くの人に伝えられるようになりたい。
それが、この業界に入って編集者を目指そうと思ったきっかけだった。
「……え?」
「デザイナーなら他にもいる。顔出しも取材も避けてる人間より、撮影もインタビューも喜んで受けるやつはいくらでもいる」
淡々とした口調だけれど、その視線はまっすぐだった。
「目的は何?誌面を埋めたいだけなのか、編集者としての実績づくりなのか。それとも、他に理由がある?」
「ち、違います!」
「じゃあ何で?」
矢継ぎ早に質問されて、私は戸惑う。
私はもともとインテリアのカタログやデザイン誌を見るのが好きだった。
実家が代々続く古い日本家屋だったせいもあって、思春期の頃にそういった『おしゃれなもの』への漠然とした憧れがあったからかもしれない。
一度はその道に進むことも考えたけれど、私には絵やイラストのセンスが壊滅的になかった。
好きなだけではやっていけない世界――センスのある人たちが集まる中でやっていける未来が、どうしても描けなかった。
進路に悩んでいるときに出会ったのが、新堂さんが受賞した作品だった。
スチール製のチェアの中に日本の伝統工芸をミックスした、既存にとらわれない美しいデザイン。
ネットニュースで見た記事に、私は釘付けになった。
けれど、私の周囲の反応は『誰?』『どこがすごいの?』ばかり。
私が受けた衝撃や感動が伝わることはなかった。
――こうやって活躍している人を知ってもらいたい。自分の言葉で、多くの人に伝えられるようになりたい。
それが、この業界に入って編集者を目指そうと思ったきっかけだった。