新堂さんと恋の糸
 「今日はお忙しい中、お時間をいただきましてありがとうございます」
 「そういう挨拶はいいから、本題」
 「は、はい。今回弊社の雑誌で、新堂さんの特集記事を組みたいと思っています。条件面に関しては以前メールした内容の通りですが、今日お持ちしたのは企画書と誌面の構成案です」

 新堂さんがテーブルの上の資料をめくる。

 「毎号六ページ全四回の連載を予定しています。新堂さんは海外人気も高いですが、私たちは日本の職人技術と融合したものが多いなと感じていて、第一回はその部分にフォーカスした企画を考えています」

 私は緊張しながらも、準備してきた資料をもとに説明していく。
 編集部の主任や編集長に何度も何度も直されて、ブラッシュアップしてきた資料。もう内容もそらで言えるほど頭に入っている。

 「…そして、今年は初の個展を開かれる予定だとお聞きました。それで、もしよろしければ最終回の第四回はページを倍増して、個展の特集を組ませてもらえたらと考えています」
 「ふぅん…」

 一通り説明し終えて、小さく息をつく。

 新堂さんは企画書のページを行ったり来たりとめくったりして、意外なほどしっかりと読み込んでくれていた。ところどころにペンで印をつけたりしていて、静かな会議室にその音だけが響く。

 どこか不備があっただろうか――私は、その一挙手一投足が気になって仕方がなかった。

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