新堂さんと恋の糸
「……本当に、この手紙に書いてある内容の通りなんだな」

 そう言って、新堂さんは見覚えのある封筒を取り出した。これまで何度かアポイントの依頼をした中で、私が最後に出した手紙だ。

 「『高校生のとき、初めて新堂さんの受賞作品を見た衝撃は今でもはっきりと覚えています。そのときから新堂さんは憧れの人です。自分の進路に悩んでいた私に…』」
 「ちょっ、!?読み上げるのはなしです!だめです!」

 私は思わず立ち上がって止めようとするけれど、体をかわされてしまう。

 「これ、オファーというよりは……かなり個人的な感情が乗ってる。そういう熱量で取材を申し込んでくる編集者は、正直珍しい」
 「返してください」
 「なんで。これは俺に宛てたものだろ」
 「それはそうですけど……」

 新堂さんは手紙をテーブルの上に置くと、指先で資料の端を整えながらこちらを見た。

 「憧れと現実が違って冷めた?」
 「……え?」
 「正直に言っていい。別に珍しくないしそういう反応には慣れている」

 唐突な質問に、私はどう答えていいのか分からず目線をさまよわせた。
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