新堂さんと恋の糸
「手紙まで送ってくるなんて熱心な人だね。便箋5枚?すごっ。ねぇ俺も読んでみていい?」
「読んでどうするんだよ、それより仮眠しろ」
「だってそこまでしてくる人って珍しいし、何て書いてあるのか興味ある」

こうなるといくら言っても聞かない。仕方なく溜息をついて手紙を渡す。俺宛てではあるが取材に関することだし、取材を受ける受けないに関しては玲央の意見は欠かせないからだ。

「新堂さんこれ、取材のオファーっていうかさぁ…」
「ファンレターみたい、だろ?」

しばらく経って手紙を読み終えた玲央の呟きに、俺は被せるように言う。便箋の2枚目、『高校生のとき、初めて新堂さんの受賞作品を見た衝撃は今でもはっきりと覚えています』から始まる内容は、これまでメールには書かれてこなかったことだった。
自分の叶わなかった夢や俺に対する憧れ、俺の作品を通して発信したいこと。よくここまでストレートに書けるものだと、読んでいるこっちがこっぱずかしくなるような文章だ。

「ファンレターっていうか、もうラブレターじゃない?」
「らぶ…っ、変なこと言うな、」

玲央の手から読み終わったそれをひったくるように取り返すと「で、どうするの?」と面白そうに聞いてくる。
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