新堂さんと恋の糸
「どうするって、」
取材を断るのか、それとも受けるのか。いつもだったら悩まない。断るの一択だ。
これで断ったら、この櫻井泉という編集者はどうするだろう。ここまでやって駄目だったのなら…と、さすがに諦めるのだろうか。
そう思うと、なぜかいつものように割り切れない。
「いいじゃん、会ってみたら?」
そんな俺の葛藤を見透かすように玲央が笑っている。
「とりあえず会ってみて、それで決めてもいいんじゃない?」
「けど、もしそれで受けるとなったら面倒なことになるぞ」
普段クライアントが出入りする時間は部屋に引きこもっている玲央だ。取材に来てもらうにしても、雑用係として来てもらうにしても、この事務所に他人が出入りすることになるのは変わらないわけで。
「俺に気を使わなくていいよ。来る時間さえ事前に教えてもらえれば後は調整して好きにやるし、新堂さんが認めた人なら俺も会っても大丈夫だからさ。それに、」
「それに?」
「たぶんこの櫻井さんって人、いい人だと思うよ。何となくだけど」
じゃあ俺は寝てくるねと言って、玲央は伸びをしながら仕事部屋へと戻っていった。
(……いい人、ね)
俺は手元の手紙にもう一度目を落とす。そうして、くせのない丁寧に書かれた手紙の文字を無意識に指でなぞった。
取材を断るのか、それとも受けるのか。いつもだったら悩まない。断るの一択だ。
これで断ったら、この櫻井泉という編集者はどうするだろう。ここまでやって駄目だったのなら…と、さすがに諦めるのだろうか。
そう思うと、なぜかいつものように割り切れない。
「いいじゃん、会ってみたら?」
そんな俺の葛藤を見透かすように玲央が笑っている。
「とりあえず会ってみて、それで決めてもいいんじゃない?」
「けど、もしそれで受けるとなったら面倒なことになるぞ」
普段クライアントが出入りする時間は部屋に引きこもっている玲央だ。取材に来てもらうにしても、雑用係として来てもらうにしても、この事務所に他人が出入りすることになるのは変わらないわけで。
「俺に気を使わなくていいよ。来る時間さえ事前に教えてもらえれば後は調整して好きにやるし、新堂さんが認めた人なら俺も会っても大丈夫だからさ。それに、」
「それに?」
「たぶんこの櫻井さんって人、いい人だと思うよ。何となくだけど」
じゃあ俺は寝てくるねと言って、玲央は伸びをしながら仕事部屋へと戻っていった。
(……いい人、ね)
俺は手元の手紙にもう一度目を落とす。そうして、くせのない丁寧に書かれた手紙の文字を無意識に指でなぞった。