新堂さんと恋の糸
9. 回想〜新堂side
いつからか、と問われると正確には分からない。
でもたぶん初めて意識したのは、あのとき―――
「新堂さん、さっきから何読んでるの?」
聞こえてきた声に顔を上げると、頭からフードを被った玲央が自室から出てきたところだった。グレーのパーカーの紐をくるくると指に巻きつけながら、一つ大きな欠伸をする。この出で立ちは徹夜明けだ。
「ちゃんと睡眠はとれって言ってるだろ」
「ごめんって。いろいろ試してたら楽しくなっちゃってさ。でもいいサンプルできたよ、ほら」
そう言って、ぽんっと投げてよこしたそれをキャッチする。頼んでいたフラワーベースのサンプルだ。
「へえ、木の質感がよく出てるな」
「でしょ?で、何それ手紙?」
普段俺が手紙を読んでいることなんてないからか、珍しく玲央が興味を示してくる。
「取材の依頼。もう何度も断ってるんだけどな」
差出人は文董社が出版する雑誌『D.design』の編集者、櫻井泉。これまで数回メールで取材依頼がきていたが、多忙を理由に断っていた。
『新堂梓真の取材嫌い』は業界内で浸透していて、ダメ元で依頼してきても一度断ればそれっきりになることが多い。
けれど、この櫻井泉という編集者は違った。
「どういう記事を書きたいのか」や「取材の時間が長引かないようにするための提案」など、毎回長いメールをよこしてくる。そして今回はとうとう手紙が送られてきたのだ。
でもたぶん初めて意識したのは、あのとき―――
「新堂さん、さっきから何読んでるの?」
聞こえてきた声に顔を上げると、頭からフードを被った玲央が自室から出てきたところだった。グレーのパーカーの紐をくるくると指に巻きつけながら、一つ大きな欠伸をする。この出で立ちは徹夜明けだ。
「ちゃんと睡眠はとれって言ってるだろ」
「ごめんって。いろいろ試してたら楽しくなっちゃってさ。でもいいサンプルできたよ、ほら」
そう言って、ぽんっと投げてよこしたそれをキャッチする。頼んでいたフラワーベースのサンプルだ。
「へえ、木の質感がよく出てるな」
「でしょ?で、何それ手紙?」
普段俺が手紙を読んでいることなんてないからか、珍しく玲央が興味を示してくる。
「取材の依頼。もう何度も断ってるんだけどな」
差出人は文董社が出版する雑誌『D.design』の編集者、櫻井泉。これまで数回メールで取材依頼がきていたが、多忙を理由に断っていた。
『新堂梓真の取材嫌い』は業界内で浸透していて、ダメ元で依頼してきても一度断ればそれっきりになることが多い。
けれど、この櫻井泉という編集者は違った。
「どういう記事を書きたいのか」や「取材の時間が長引かないようにするための提案」など、毎回長いメールをよこしてくる。そして今回はとうとう手紙が送られてきたのだ。