新堂さんと恋の糸
 「みんな見てますっ、」

 頬まで真っ赤にしているわりに、やっぱり自分の足より人目が気になるらしい。

 「周りの目より、自分のケガの心配でもしたら?」

 あれこれ抗議するのをすべて無視して歩き始めると、十分ほどしてセントラルタワービルに到着した。
 何度か利用しているのでここでの勝手は分かっている。受付で入館証を受け取り、それをかざしてゲートを通るとエレベーターホールまで行ける。

 「あの、ここまで送っていただいたありがとうございました」
 「送っていただいてって……まだ分からない?」

 ここに来るまでの会話でヒントを出していたつもりだったけれど、まるで気づいていないらしい。
 不思議そうに首を傾げる姿を横目に、これまた俺たちを不思議そうに見ている受付係に自分の名前を告げると、小さく「えっ??」と呟く声が聞こえた。
 あまりに驚きすぎて声も出ないのか、俺が受付でやり取りしている間もただ呆然とこちらを見つめている。

 「嘘……、本当に、新堂梓真さん…?」
 「やっと気づいた?泣くほど会いたかった打ち合わせ相手」
 「!?な、泣いてはいませんっ…!」

 そうして俺はそのまま医務室まで送り届けると、先に会議室に行って待つことにした。
 このあとどんな顔をして現れるのかを、少しだけ楽しみにしながら。
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