新堂さんと恋の糸
 応急手当てを終えて戻ってきて、お互いに軽く自己紹介をして名刺を渡す。
 まだ半信半疑なのか、渡した名刺を穴が開くほど見つめている。このままでは無駄に時間が過ぎていきそうなので、先を促して席に座った。

 「今回弊社の雑誌で、新堂さんの特集記事を組みたいと思っています。条件面に関しては以前メールした内容の通りですが、今日お持ちしたのは企画書と誌面の構成案です」

 目の前に置かれた資料をめくる。以前メールで送られてきた企画書と大筋は変わっていなかったが、内容はさらに具体的になっている。特に俺が過去に発表した作品については詳細に調べているようだった。

 「新堂さんはまず海外の受賞で注目されて海外人気も高いですが、私たちは新堂さんのデザインには日本の職人技術と融合したものが多いなと感じていて、第1回はその部分にフォーカスした企画にしたいと考えています」

 日本の皮革製品メーカーとコラボした財布やキーケースの革製品、時計ブランドと開発した腕時計。
 
 (あぁ、塗箸の工房に依頼した箸と箸置き、そういえばこういうのも作ったっけ)

 めくったページには、取り上げたいという候補作品の写真が何枚か載っていて、さらに誌面の構成もかなり変更していた。
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