新堂さんと恋の糸
◇◇◇◇
その夜、何となく帰る気にならず残った仕事を片付けていた。
「あれ。新堂さんまだ帰んないの?」
「まだ仕事が残ってるから」
俺はパソコンのキーボードを叩いていると、玲央は俺の前の椅子に腰かける。
「今日は随分熱く語ってたね」
「?何の話だよ」
「デザイナーに絵の才能は関係ないとか、櫻井さんのことめっちゃ褒めてたじゃん」
「別に褒めてはいない……っつーか聞いてたのかよ」
「ここのオフィス、ドアがないからね」
「オープンなのも考えものだな」
どこかでしたような会話だなと思いつつ、俺はモニターから目を離さずに話し続ける。
「そういえばさ、櫻井さんの取材の件どうするの?」
「どうするって?」
「そろそろ一週間経つし、結論出さないと悪いんじゃない?まさかずっとタダ働きだけさせるつもりじゃないでしょ?」
玲央はときどきいきなり核心をついてくる。
正直なところ、俺はまだ決めかねていた。あれだけの知識と熱意があって、こっちが押しつけたルールも仕事も嫌な顔せずにこなしてくれている。その仕事ぶりから、きっと取材を受けても問題ないし良い記事を書いてくれるに違いない。
連載は四回と言っていたから、おそらく数ヵ月はここで一緒に仕事することになる。
そう考えた途端、胸の奥がざわついた。何がどう、というわけでもないが、ただ落ち着かない。地に足がつかないような妙な感覚。それが他の仕事に何らか影響が出るかと思うと、いまいち踏み切れずにいる。
「…お前は、どう思う?」
「どうって?」
「あいつが取材に来ること」
「嫌だよ」
玲央のあまりの即答に俺は驚く。思わず手が止まって、パソコンのモニターから目を外して正面の玲央の顔を見た。
その夜、何となく帰る気にならず残った仕事を片付けていた。
「あれ。新堂さんまだ帰んないの?」
「まだ仕事が残ってるから」
俺はパソコンのキーボードを叩いていると、玲央は俺の前の椅子に腰かける。
「今日は随分熱く語ってたね」
「?何の話だよ」
「デザイナーに絵の才能は関係ないとか、櫻井さんのことめっちゃ褒めてたじゃん」
「別に褒めてはいない……っつーか聞いてたのかよ」
「ここのオフィス、ドアがないからね」
「オープンなのも考えものだな」
どこかでしたような会話だなと思いつつ、俺はモニターから目を離さずに話し続ける。
「そういえばさ、櫻井さんの取材の件どうするの?」
「どうするって?」
「そろそろ一週間経つし、結論出さないと悪いんじゃない?まさかずっとタダ働きだけさせるつもりじゃないでしょ?」
玲央はときどきいきなり核心をついてくる。
正直なところ、俺はまだ決めかねていた。あれだけの知識と熱意があって、こっちが押しつけたルールも仕事も嫌な顔せずにこなしてくれている。その仕事ぶりから、きっと取材を受けても問題ないし良い記事を書いてくれるに違いない。
連載は四回と言っていたから、おそらく数ヵ月はここで一緒に仕事することになる。
そう考えた途端、胸の奥がざわついた。何がどう、というわけでもないが、ただ落ち着かない。地に足がつかないような妙な感覚。それが他の仕事に何らか影響が出るかと思うと、いまいち踏み切れずにいる。
「…お前は、どう思う?」
「どうって?」
「あいつが取材に来ること」
「嫌だよ」
玲央のあまりの即答に俺は驚く。思わず手が止まって、パソコンのモニターから目を外して正面の玲央の顔を見た。