新堂さんと恋の糸
13. きみがため〜新堂side
もともと『誰かのため』に作るつもりはなかった。
初めて個展を開くなら一つくらい新作を発表しないと格好がつかない――きっかけは、その程度だった。
けれど、開催に向けての準備が本格化する中で、抱えている案件も捌かなければならない。合間を縫ってラフを描いてみても、どれも悪くはないが決定打に欠けた。ボツ案の山だけが積み上がっていき、あるところから完全にペンが止まった。
(この程度なら、わざわざ個展で出すまでもない……)
そして完全に煮詰まっていたとき、櫻井が熱を出したと聞いて見舞いに行くことにした。
簡単な夕食を食べさせて、片付けも済ませたあと――そのまま帰る、という選択肢はなかった。
ベッドに入った櫻井は、すぐに深い眠りに落ちていた。
掛け布団は半分ほど蹴り出されていて、肩から下が出てしまっている。
(この体温でそれはないだろ)
熱があるときは汗をかいた方がいいとはいえ、冷やしすぎるのは違う。なるべくずれないように布団をかけ直してやり、額に張りついた前髪を指で払う。
むにゃ、と小さく口が動く。寝息は穏やかで、起きる気配はない。その顔を眺めているうちに胸のどこかがふっと軽くなった。
―――その瞬間、あっ、と思った。
ここ数日沈黙していた場所から、アイデアが浮上してくる感覚があった。
初めて個展を開くなら一つくらい新作を発表しないと格好がつかない――きっかけは、その程度だった。
けれど、開催に向けての準備が本格化する中で、抱えている案件も捌かなければならない。合間を縫ってラフを描いてみても、どれも悪くはないが決定打に欠けた。ボツ案の山だけが積み上がっていき、あるところから完全にペンが止まった。
(この程度なら、わざわざ個展で出すまでもない……)
そして完全に煮詰まっていたとき、櫻井が熱を出したと聞いて見舞いに行くことにした。
簡単な夕食を食べさせて、片付けも済ませたあと――そのまま帰る、という選択肢はなかった。
ベッドに入った櫻井は、すぐに深い眠りに落ちていた。
掛け布団は半分ほど蹴り出されていて、肩から下が出てしまっている。
(この体温でそれはないだろ)
熱があるときは汗をかいた方がいいとはいえ、冷やしすぎるのは違う。なるべくずれないように布団をかけ直してやり、額に張りついた前髪を指で払う。
むにゃ、と小さく口が動く。寝息は穏やかで、起きる気配はない。その顔を眺めているうちに胸のどこかがふっと軽くなった。
―――その瞬間、あっ、と思った。
ここ数日沈黙していた場所から、アイデアが浮上してくる感覚があった。