新堂さんと恋の糸
 「ねえ新堂くん、レセプションって本当に明日なのよね?」
 「そうだけど」

 これまで、麻生には事務所の仕事も資料も見せてきたが、ただ一つ、個展に関するものだけは一切触れさせていない。初めは不審がっていたが「当日、俺が会場を案内する」と言えば、意外にもあっさり引き下がった。

 ただ肝心の招待状は、今日まで渡していない。レセプションの開催は明日に迫り、さすがに気を揉んでいるのだろう。そのことを自分から言い出すまで、俺はずっと黙っていた。

 「私、招待状をもらってないわ、それじゃ入れないじゃない」
 「あぁそうだったっけ。忙しくて忘れてた」

 今思い出したかのようにバッグから招待状を取り出して、麻生の目の前に差し出す。目を輝かせて手を伸ばそうとしたところで、ひょいと腕を上げて届かない位置まで遠ざけた。

 「……どういうつもり?」
 「渡す代わりに条件がある」
 「条件?」
 「この間の記事流出の件、知ってることを全部話せ」

 麻生の動きが止まって、少し目を見開いた。

 「言ってる意味が分からないわ」
 「なら、これは渡さない」

 初めて自分の優位が揺らいだことを察したのか表情が強張ると、軽く唇を噛みこちらを睨みつける。

 「いいの?あなたと泉ちゃんのことを話しても?」
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