新堂さんと恋の糸
 「大学の頃に麻生が、あるデザイナーの個展へ誘って、俺がにべもなく断ったことがあったらしい」
 「……らしい、ってことは」
 「正直俺は覚えてない。でも本人はそれがずっと引っかかってて、もう一度断られるのが怖くてオファーできなかったって」

 その話を聞いて分かった。
 私が新堂さんに憧れたのと同じように、杳子さんもまた、新堂さんに憧れていたのだと。

 「……憧れの人に断られたら、誰だって怖気づいてしまいますよ」

 私が取材を取ってきたことが許せなかった。
 それは裏を返せば『誰よりも自分が取りたかった』という意味にもとれるような気がする。

 「櫻井は何回断っても空気を読まずにオファーしてきただろ。その熱意に惹かれたから俺は受けた。そのことで櫻井も俺も逆恨みされるいわれはないし、麻生のしたことを庇う理由にはならない」

 敢えて強い口調なのは、新堂さんなりの優しさだ。
 新堂さんはいつもこうやって、私の中にある揺らぎや本音を言い当ててしまう。
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