新堂さんと恋の糸
 ――本当にバカだ、私。

 これほど思われていながら、守られていながら。

 杳子さんとの方がお似合いかもしれないとか、そんなくだらないことで悩んで小さな不安に雁字搦めになって、諦めようとして。
 もっと早く気持ちを言っていればよかった。新堂さんを、信じていればよかったんだ。

 新堂さんの気持ちに気づきながら、拒絶したのは自分。
 それでも――今は、その線を越えてでも伝えたい。

 「私、新堂さんのことが好きです。憧れだからとかそういうことじゃなくて……」

 ペン一本で、私が今まで見たことのない世界を作り出してしまうことが。
 触れる手や紡がれる言葉の裏に、たくさんの優しさを器用に隠してしまうその不器用さが。

 「新堂さんが、新堂さんであるところが好きです」

 何の前触れもなくそう告げたことで、新堂さんは一瞬虚をつかれたようにような顔をして――それから少し照れたようにほころんだ。

 (こんなふうにも、笑うんだ)

 知らなかった一面に、また一つ好きが積み重なっていく。
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