新堂さんと恋の糸
エピローグ
それから数ヵ月後。

杳子さんは自分の行為を認めて謹慎処分となった後、他の部署への転属を断り退職したと耳にした。
園田編集長は、記事流出発覚後の杳子さんの言動や、それ以前から私がたびたび急なヘルプに駆り出されていることに違和感があったらしい。

「そこまで拗らせていたことに気づかなかったなんて、私の責任でもあるわね」

そう言って編集長は肩を竦めていたけれど、私はそんなことないですと首を振った。

私たちの誰のせいでもない。
すべては杳子さんの、心の問題だった。

編集部の人不足は相変わらずだけれど、編集長が解消のために奔走してくれている。
私は杳子さんのポジションを引き継ぐかたちで主任になった。そしてこれまで契約社員だった河北さんが正社員となって、私の下についてくれることが決まった。


有働くんは、あのとき話していた通り文董社(うち)とは契約を更新せず、憧れだというカメラマンの人にくっついて日本全国を回っているらしい。

まだ正式にアシスタントとして雇われているわけではないらしいけれど、定期的に届く連絡を読む限り、充実しているみたいでほっとする。

今は青森にいると近況が書かれたメールには、綺麗な風景写真が添付されていた。

『近々東京に戻る予定だからまた飲もうな。
そのときは新堂さんも一緒に!』

本文の最後にそう書いてあるけれど、実現するかどうかは梓真さんに要相談だ。


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