新堂さんと恋の糸
 「俺はCGと模型作りが主な仕事。これがちょうど出来上がったばかりのアロマディフューザーのサンプルで、こっちはレストランの内装模型」

 私はデスクの上のそれらを写真に撮る。

 (あれ、手前にピントが合わない…こういうときってF値を下げるんだっけ?あ!ちょっとブレた)

 「めちゃくちゃ激写するじゃん」
 「すみません、ちょっと待ってもらっていいですか…」
 「うまく撮ってよ?」
 「が、頑張ってます…」

 玲央くんの飄々とした態度は新堂さんとは別の種類の、こちらがNOとは言えない雰囲気に持ち込んでしまう力がある。だんだんと距離感や画角が掴めてくると、もう何度かシャッターを切ってからカメラを置き、今度はノートを手に取る。

 「この模型が出来上がるまでのプロセスを教えてもらってもいいですか?あと完成するまでにかかる時間も大まかに教えてもらえると助かります」
 「模型はあそこにある3Dプリンターとかレーザー加工機で作る。出来上がったら下地材を吹き付けて研磨。色が決まっていれば塗装して乾燥させる。プロダクトなら二日で完成。内装デザイン系だとCGグラフィック込みで五日から一週間くらいかな」
 「結構早いんですね、びっくりしました」
 「次の打ち合わせの場では出せるようにしたいらしいから、そこはスピード勝負」

 触ってみる?とデスクに置かれた模型を一つを渡されると、それはまだほんのりと温かい。

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