新堂さんと恋の糸
「これで全部だと思うけど、念のために確認して」
「……はい、全部あります。すみません、ありがとうございます」
私は渡された資料やポーチ、財布などを受け取ってバッグの中にしまうと、お礼を言って頭を下げた。
「足首捻ってるかもしれないし、とりあえず病院行ったほうがいい気がするけど」
「いえ、そこまでは!そんなにひどいケガじゃないので」
そう言って、軽くつま先をトントンと叩く。
私としては問題ないことをアピールしたつもりだったけれど、目の前の男性は眼鏡の奥からじっと観察するような目を向けている。
「この後は大事な打ち合わせがあって、遅れるわけにいかなくて」
「それならなおさら、リスケしたほうがいい」
「で、でもすごく忙しい人で……というか会ってもらえるだけで奇跡のような人なんです」
「大げさだな」
呆れたように言われて、私は言葉に詰まる。
そのとき、男性は足元に落ちていた何かに気づいてそれを拾い上げた。
(あれ、私の名刺…!)
「… 文董社の櫻井泉?……そういうことか」
男性は一人で何かに納得したように小さく呟くと、私を一度見やる。
「どうするんだ?そんな恰好で現れるほうが、先方も迷惑だと思うけど」
「そんな恰好って……あぁっ!?」
指摘されて確認すると右膝のストッキングが破れていて、おまけに踵まで伝線している。
冷静に見ると、確かにひどい。
「……はい、全部あります。すみません、ありがとうございます」
私は渡された資料やポーチ、財布などを受け取ってバッグの中にしまうと、お礼を言って頭を下げた。
「足首捻ってるかもしれないし、とりあえず病院行ったほうがいい気がするけど」
「いえ、そこまでは!そんなにひどいケガじゃないので」
そう言って、軽くつま先をトントンと叩く。
私としては問題ないことをアピールしたつもりだったけれど、目の前の男性は眼鏡の奥からじっと観察するような目を向けている。
「この後は大事な打ち合わせがあって、遅れるわけにいかなくて」
「それならなおさら、リスケしたほうがいい」
「で、でもすごく忙しい人で……というか会ってもらえるだけで奇跡のような人なんです」
「大げさだな」
呆れたように言われて、私は言葉に詰まる。
そのとき、男性は足元に落ちていた何かに気づいてそれを拾い上げた。
(あれ、私の名刺…!)
「… 文董社の櫻井泉?……そういうことか」
男性は一人で何かに納得したように小さく呟くと、私を一度見やる。
「どうするんだ?そんな恰好で現れるほうが、先方も迷惑だと思うけど」
「そんな恰好って……あぁっ!?」
指摘されて確認すると右膝のストッキングが破れていて、おまけに踵まで伝線している。
冷静に見ると、確かにひどい。