新堂さんと恋の糸
 「新堂さんが賞を取った作品の下絵かデザイン画って残っていたりしますか?できたら記事に載せたいなと思っているんですけど」
 「どっかにあると思うけど……探しとく。そういえば、さっき工房から最終チェック用のサンプルが上がって届いたところだけど見る?」
 「いいんですか?ぜひ!」

 ちょっと待ってろと言って、新堂さんは高そうな木箱を持ってきた。

 「これはデンマークのブランドとショップのコラボで限定デザインを頼まれたカトラリー一式」
 「わぁ綺麗!これは…螺鈿ですか?」
 「よく知ってるな。模様を切り出してこの部分に嵌めこんである」

 ナイフ、フォーク、スプーンの柄の部分に美しい模様が装飾されている。

 私は手に取って光に当ててみる。角度を変えるたびにキラキラと違う色が光るけれど派手すぎなくて、金属のカトラリーとすごく合っていた。

 「こっちは砕いた螺鈿の粉と粉銀を漆に塗りこんであって、ティースプーンとかデザートフォークとかサイズの小さいカトラリーはこのタイプ」
 「こっちも綺麗ですね、星空みたい」
 「今月中にブランドからプレスリリースが出るから、それに合わせて記事に入れたいなら、先方にも確認が必要だな」

 私は、許可を取って撮影をさせてもらう。
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