新堂さんと恋の糸
 水槽からやや離れたところに休憩できるスペースがある。
 そこには少し変わったデザインの椅子やベンチが目に留まって、そこへ移動して少し休むことにした。

 「ほんとにすみませんでした」
 「別に気にしなくていい。俺も歩き通しで少し休みたかったし」

 ここは水槽から離れているせいか喧騒からも遠ざかっていて、館内を俯瞰で見られる。

 「どうですか?会場デザインの参考にはなりそうですか?」
 「ん?まぁ、そうだな。会場全体をここまで暗くするのは見づらいけど、エリアの一部だけ照明を落として、展示にだけスポットを当てるとか面白いかと思ってる」
 「いいですねそれ!あとさっき回ってて思ったんですけど、今日みたいに人が多いと背の低い人とか車いすの人とか、前に行けなくて見づらそうなんですよね。そういうのが解消できたらいいのになって思ったんですけど」
 「全員が見やすい展示方法ってことか、なるほどな」

 新堂さんが興味深そうにうなずく。

 「どれくらいの作品を展示する予定なんですか?」
 「まだざっくりとだけど百二十ちょっとくらいか。あとは未発表のものを何作か追加する」

 賞を取った作品はスウェーデンの美術館に収蔵されているので、今回展示することはできないらしい。
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