新堂さんと恋の糸
 予想外の出来事に戸惑っている間にも、男性は私の体を押しのけるようにしてズカズカと中に入り込んできた。

 (誰なんだろう……新堂さんの知り合い?クライアント?)

 空いている椅子を見つけて何も言わずにどかっと座りこんだ男性は、デスクに頬杖をつくと私へと目を移す。

 「あんた誰?ここの新しいデザイナー?」
 「いえ違います、私は今取材をさせてもらっている出版社の者です」
 「へえ?取材、ね」

 値踏みをするような視線が居心地悪い。お茶とか出したほうがいいんだろうか。でも明らかにアポなしのようだし、そもそも名乗ってももらっていない。

 「すみません、お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
 「新堂サンはいないわけ?」

 私の質問は丸っきり無視される。どうしていいのか分からず、私はただ「ただいま打ち合わせ中ですが…」と答えるしかなかった。

 「そう、じゃあこのまま中で待たせてもらう」
 「今日はこの後も会議が立て続けに入っているようなんです。あの、それに今日は来客の予定はないと、」

 私が言い終わらないうちに、男性は何も言わずいきなりデスクを蹴り上げた。あまりの音と威圧的な態度に、私はすっかり萎縮してしまって一歩も動けなくなってしまう。

(どうしよう……どうすれば……)

手が震えて、言葉が出てこない。そのとき――

「騒がしいと思ったら……何やってんだ、藤城」

振り向くと、リモート会議中のはずの新堂さんが立っていた。
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