新堂さんと恋の糸
 新堂さんは迷いなく私の前に立つと、藤城という男を睨みつけた。

 「メールでの連絡を断ったら、今度は事務所に押し入りか?相変わらず腐ってるな」

 その声は、明らかに温度が違っていた。
 普段の仕事モードとも少し違う。冷たい、というより――怒りを押し殺している。

 「おぉ、いたいた。そっちこそ相変わらず愛想ないなぁ、新堂」

 藤城さんは立ち上がることもなく、椅子にふんぞり返ったまま、馴れ馴れしく片手を上げる。

 「聞いたぜ、お前最近取材受けてるんだって?」
 「……お前には関係ない」
 「なんだよ、昔は仲良く組んでた仲だろ?」

 藤城さんは、こちらの反応を楽しむように口角を上げる。

 「なぁ新堂。また俺と組まないか?」
 「……お前と?冗談言うな」
 「冗談じゃないさ。あのときの取材データ、俺まだ持ってんだよ。お蔵入りさせるには惜しいネタだと思うんだよな」

 (ラフ画の……写真?)

 嫌な単語が耳にひっかかって、私はハッとした。
 この事務所に初めて来たときに新堂さんが言っていた言葉。

 ――昔、一度だけ全部見せた相手がいる。
 ――でも、結局最後はめちゃくちゃにされて終わった。だから人を事務所に入れるのは好きじゃない。余計なものまで見られて、探られるから。

 (もしかして……この人のこと?)
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