新堂さんと恋の糸
 「……何年経っても性根は変わってないんだな」

 新堂さんは一度、深く息を吸った。

 「取材の名目で近づいて、人のデザインやラフを黙って撮って売ったことはどう説明する気だ」
 「あぁ、あれ?まだ覚えてたのか」
 「お前が撮ったラフが数ヶ月後に“別のデザイナーの新作”として発表された。偶然じゃ済まされないほど細部が一致したものだ」

 藤城は、まったく悪びれずに肩をすくめてみせる。

 「細けぇこと言うなよ。デザイン業界なんて似たようなのが回るもんだろ?新堂だって似たようなこと、一回や二回――」

 その一言に、私は堪えられなかった。

 「新堂さんはそんなことしません……っ」

 声が震えた。悔しくて、腹が立って、胸の奥が熱くなる。

 新堂さんがどれだけの時間をかけて、どれだけの集中と犠牲でアイデアを生んでいるか。ほんの少しの間でもそばで見ていれば分かるはずだ。それを“似たようなことをしてる”なんて、どうして言えるのか。
 編集者としても、ものづくりが好きな一人としても許せない。
 
「あなただって、たとえ少しの間でも新堂さんを取材したことがあるのなら、そんなこと言えないはずです!それを、勝手に撮影して他人に渡していたなんて、そんなひどいことをどうして――」
 「櫻井、もういい」

 新堂さんが私の肩に手を置いた。
 その声は驚くほど落ち着いていて、私を冷静な世界へ引き戻そうとしてくれているようだった。

 思わず新堂さんを見上げると、目の奥に少しだけ柔らかさがある。

 「なんだよ、あんただって新堂に近づいて、売れるネタが欲しいんじゃねえの?」

 まるで揶揄するような言葉に、新堂さんが私をかばうように前へ出た。

 「櫻井をお前みたいなクズと一緒にするな」
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