新堂さんと恋の糸
 どれくらいの間、そうしていただろうか。

 ドアの向こうでは、どうやら新堂さんが呼んだ警察官が到着したようで、一段とガヤガヤと騒がしくなっている。たぶんこれから事情を聞かれたりするだろうから、しばらくはここにいた方がいいかもしれない。

 「……ごめんね、巻き込んじゃった」

 ぽつりと呟く玲央くんに、私はううんと首を振る。

 「怖くないの?俺がいきなりあんなふうになってさ」
 「え?」
 「普通の人は引くと思うけど、呼吸の仕方とかすごい冷静だったから」
 「あ、それはたまたま知っていただけなんです」

 高校のとき、同じクラスの子が体育の授業中に過呼吸になったことがあった。

 そのときに駆けつけてきた先生が、
 『自分や周りの誰かが過呼吸になっても慌てない』
 『深呼吸をするみたいに大きく息を吸うんじゃなくて、ゆっくり息を吐き出すのがいい』
 と教えてくれたのを、何となくおぼろげに覚えていた。

 そっかと言うと、玲央くんは両手をぎゅっと握る。

 「…最近は、いきなり人が訪ねてきてもだいぶ大丈夫になったんだけど、体調のせいなのか、たまにこうやってダメなときがあるんだよね」
 「初めて会ったとき、初対面の人が苦手って言ってたこと?」
 「正確に言うと初対面の人が苦手なんじゃなくて、予定外の人と出くわすのが苦手って言ったほうがいいかな」
 「あの、無理して話さなくても…」
 「ううん、もう大丈夫。それに、ポメ子さんには聞いてほしい」
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