新堂さんと恋の糸
 「えっ…?」

 予想外の答えに、私は驚いた。

 「それからしばらくして、授業中に他の先生が誰かを呼びに入ってきたことがあったの。たったそれだけのことでフラッシュバックしてまた過呼吸になっちゃってさ」

 そんなことがあったら、トラウマにもなる――話を聞きながら、私は事務所のドアを簡単に開けてしまった迂闊さを悔やんだ。いきなり知らない男の人が入ってきて、あんな態度を取られてどれだけ怖かっただろう。
 ごめんね、と口から出そうになって私は口をつぐむ。謝ることで私は楽になるけれど、逆に玲央くんの負担になってしまうような気がした。

 「それで学校にも行けなくなって引きこもってたら、ある日新堂さんが家に来たんだよね」
 「……連絡もなく、ですか?」
 「そう。あとから考えたらけっこうムチャなんだけどさ」

 玲央くんは、少しぼやくように言いながらもどこか嬉しそうだ。

 「で、そのときの電話で言われたの。『デザインは――対象物とそれを取り巻く世界との関係を考えることだから、外の世界と隔絶していたら良いものは作れない。続けたいなら閉じこもってても駄目だ』って」

 その口調を真似るように言いながらも、どこか懐かしそうに笑う。

 「そのとき気づいたの。あの人は連絡もなく急に来たのに、パニックにならなかったんだ。それで『あの人は大丈夫なのかも』って」 
 「……それで、専門学校を辞めて?」
 「うん、新堂さんのところで雇ってもらったってわけ」
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