新堂さんと恋の糸
 それから新堂さんは一度玲央くんの様子を見に行って、しばらくして戻ってきた。

 まだ寝てはいなかったようで「ほっとくとゲームをし始めるかもしれないから」と没収してきた玲央くんのスマートフォンが手の中にあった。

 「これで大人しく寝るといいけど」
 「だいぶ元気になったみたいでよかったですね」
 「ずっと介抱してくれてたんだって?玲央から聞いた」
 「付き添ってただけですよ私なんて」

 新堂さんが椅子に座ったので、私はコーヒーを淹れたマグカップを渡した。

 「専門学校のときのこと…聞きました。新堂さんが家まで来て説得してくれたって」

 玲央くんから聞いた話をすると、新堂さんはコーヒーをひと口飲んで息をつく。

 「特別授業の講師なんて普通なら断るけど、大学時代に俺の海外行きを支援してくれた人からの話で断れなかった。で、授業中にああいうことになって、俺は一日限りだしそれっきりになるはずだったんだけど……まぁ、合縁奇縁っていうか」

 偶然引き受けた授業中に、いきなり乗り込んできたお父さんのせいで玲央くんは倒れた。

 その一部始終を、新堂さんは目の前で見ていた。今日の私みたいに。
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