新堂さんと恋の糸
「どうしているか気になって学校に連絡したら来てないって聞いてさ。放っておいたら立ち直れないんじゃないかと思った。それで『デザインやりたいならうちで働くか』って声をかけた」
お祖父さんは玲央くんの夢に理解がある人で、『玲央の面倒を見てくれるなら』という条件で所有しているビルの一室を格安で貸してくれているのだそうだ。
当時はまだ独立した事務所を持てるほど余裕はなかったから、その申し出は好都合だったのだと言うけれど。
きっとその条件がなくても新堂さんは玲央くんを雇っていたんじゃないかと思う。
「俺は建築学科出だから、ちゃんとデザインを専門で学んでないし全部独学。だから学校を出なくたって、現場で働いて身につけていけばいいってそう思ってた。でも……それが本当にあいつにとってよかったのか、正直分からない」
「え?」
マグカップを置いた新堂さんの声が、一段小さくなった。
「忙しくて模型とかサンプルばっかり作らせて、打ち合わせが多すぎて何かを教えてやる時間もない。だから……たまに分からなくなる」
あのとき選択は、ただのエゴだったんじゃないか。
こんなに自信がなさげな表情をする新堂さんは初めてだった。
「俺も他人と関わりたくないからお互いちょうどいいと思ってたけど、ここにいることが、本当にあいつのためになってるのかって」
眼鏡をかけていない新堂さんは、いつもとどこか違う。
まるでフィルターやストッパーがなくなったみたいに素の感情が流れ込んでくるようで、私はかすかに動揺してしまった。
お祖父さんは玲央くんの夢に理解がある人で、『玲央の面倒を見てくれるなら』という条件で所有しているビルの一室を格安で貸してくれているのだそうだ。
当時はまだ独立した事務所を持てるほど余裕はなかったから、その申し出は好都合だったのだと言うけれど。
きっとその条件がなくても新堂さんは玲央くんを雇っていたんじゃないかと思う。
「俺は建築学科出だから、ちゃんとデザインを専門で学んでないし全部独学。だから学校を出なくたって、現場で働いて身につけていけばいいってそう思ってた。でも……それが本当にあいつにとってよかったのか、正直分からない」
「え?」
マグカップを置いた新堂さんの声が、一段小さくなった。
「忙しくて模型とかサンプルばっかり作らせて、打ち合わせが多すぎて何かを教えてやる時間もない。だから……たまに分からなくなる」
あのとき選択は、ただのエゴだったんじゃないか。
こんなに自信がなさげな表情をする新堂さんは初めてだった。
「俺も他人と関わりたくないからお互いちょうどいいと思ってたけど、ここにいることが、本当にあいつのためになってるのかって」
眼鏡をかけていない新堂さんは、いつもとどこか違う。
まるでフィルターやストッパーがなくなったみたいに素の感情が流れ込んでくるようで、私はかすかに動揺してしまった。