新堂さんと恋の糸
 私は有働くんが運転する車に乗って、近くの病院へと向かった。
 三十分ほど待ってから診察と一通りの検査をしてもらったけれど、これといった原因は分からず、おそらく風邪だろうということで解熱剤だけ処方してもらった。

 「とりあえず、インフルとかじゃなくてよかったな」
 「うん……ごめんね、まだ仕事あるのに」
 「いいって。予定より早く終わって帰社できたからタイミングよかったわ」

 家に送ってもらう車の中で、有働くんは運転しながら言う。

 「最近しょっちゅうヘルプ入ってたし、疲れが溜まってんじゃねえの?ちゃんと休めよ」
 「ありがとう、そうする」
 「この道ってまっすぐでいいんだっけ?」
 「うん、次の十字路までまっすぐなはずだけど」

 私はマンションまでの道を確認しようとスマートフォンを開くと、一件の着信が入っていた。

 「あ、新堂さんからだ」
 「今取材している人だよな?折り返しておいたら?」

 あの日以来、私は毎晩新堂さんへ『家に着きましたコール』をするのがお決まりになっていた。
 最初はただ本当に『家に着きました』のみの連絡だったのが、最近はお互いの仕事の進捗や玲央くんの様子など、気づけば二十分くらい話しているときもある。

 私は有働くんに促されてリダイアルすると、三コール目に新堂さんが出た。
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