新堂さんと恋の糸
「そ、それってどういう…」
混乱で視界が揺れる。近すぎる距離。熱。心臓の音。
逃げなくちゃ、と思うのに身体が動かない。
「どういうことだと思う?」
「質問返しずるいです……」
息が苦しい。熱のせいだけじゃない。
「なら、こうすれば分かる?」
そう言った直後だった。
柔らかい感触が触れて、世界が一瞬止まった。
触れたのは、ほんの刹那。だけど私の心臓は、あり得ないほど跳ね上がった。
唇が離れて新堂さんが短く息を吸う。熱い目が私を捉えて離さない。
(……あ、これ……)
これが何の気持ちか、はっきりと分かってしまった。
でも――ダメだ。
浮かされた頭で考えてしまった“甘い期待”を、私は必死に振り払った。
「い、今の……絶対、ダメです」
震える声が漏れる。
「私たちは取材相手と編集者で……だから、こんなのあり得ないです」
自分でも驚くほど涙混じりで、情けないほど震えていた。
新堂さんの表情が、わずかに揺れる。
「櫻井……」
「新堂さんのことは尊敬は……してますけど」
言葉を絞り出すたびに、胸がきゅうっと締め付けられる。
「でも……好きとか……そういうのじゃ、ないです。絶対」
(嘘だよ。嘘なのに―――)
自分の声とは思えないほど冷たくて。それなのに涙が溢れそうになって、必死に俯いた。
「……分かった」
短く落ちた声は、驚くほど静かだった。
責めも、怒りも、失望もなかった。ただ、真っ直ぐに受け止めたという気配だけがあった。
「悪かった。今のは全部忘れていい」
ゆっくり立ち上がる気配がして、足音が玄関の方へ遠ざかる。
「もう一回ちゃんと寝ろ。熱、下がるといいな」
かすかに優しさが滲んだ声がして、それからドアが静かに閉まった。
部屋がひどく静かになった瞬間、堪えていたものが一気に溢れた。
(……言っちゃった……嘘なのに……)
胸が痛い、痛くて息ができない。
だって本当は。本当は―――好きなのに。
絶対に口にできない気持ちを抱えたまま、私は再び熱に沈んでいった。
混乱で視界が揺れる。近すぎる距離。熱。心臓の音。
逃げなくちゃ、と思うのに身体が動かない。
「どういうことだと思う?」
「質問返しずるいです……」
息が苦しい。熱のせいだけじゃない。
「なら、こうすれば分かる?」
そう言った直後だった。
柔らかい感触が触れて、世界が一瞬止まった。
触れたのは、ほんの刹那。だけど私の心臓は、あり得ないほど跳ね上がった。
唇が離れて新堂さんが短く息を吸う。熱い目が私を捉えて離さない。
(……あ、これ……)
これが何の気持ちか、はっきりと分かってしまった。
でも――ダメだ。
浮かされた頭で考えてしまった“甘い期待”を、私は必死に振り払った。
「い、今の……絶対、ダメです」
震える声が漏れる。
「私たちは取材相手と編集者で……だから、こんなのあり得ないです」
自分でも驚くほど涙混じりで、情けないほど震えていた。
新堂さんの表情が、わずかに揺れる。
「櫻井……」
「新堂さんのことは尊敬は……してますけど」
言葉を絞り出すたびに、胸がきゅうっと締め付けられる。
「でも……好きとか……そういうのじゃ、ないです。絶対」
(嘘だよ。嘘なのに―――)
自分の声とは思えないほど冷たくて。それなのに涙が溢れそうになって、必死に俯いた。
「……分かった」
短く落ちた声は、驚くほど静かだった。
責めも、怒りも、失望もなかった。ただ、真っ直ぐに受け止めたという気配だけがあった。
「悪かった。今のは全部忘れていい」
ゆっくり立ち上がる気配がして、足音が玄関の方へ遠ざかる。
「もう一回ちゃんと寝ろ。熱、下がるといいな」
かすかに優しさが滲んだ声がして、それからドアが静かに閉まった。
部屋がひどく静かになった瞬間、堪えていたものが一気に溢れた。
(……言っちゃった……嘘なのに……)
胸が痛い、痛くて息ができない。
だって本当は。本当は―――好きなのに。
絶対に口にできない気持ちを抱えたまま、私は再び熱に沈んでいった。