婚約破棄されたぽちゃOL、 元スケーターの年下ジムトレーナーに翻弄されています

 ジム通いを始めて、約一カ月が経った。

 数字的に体重は大きく減ったわけではない。
 けど、確実に体が軽くなったのを感じている。

 いつの間にか姿勢が良くなった気がするし、肩こりも少ない。
 慢性的な筋肉痛はあるけど、それよりも気分の爽快さが勝る。
 運動する習慣がいかに生活にいい影響を与えるのか、29歳になってやっと実感した。

 今日は四回目のパーソナルトレーニング。

 ロッカールームに入っていくと、トレーニング仲間が手を振ってくれた。

「瑠衣さん、お疲れ~」
「お疲れ様です、リナさん。今日はもう終わりですか?」
「うん、これから彼氏と待ち合わせ。あ、今度お茶でもしようね」

 シャワーを浴びたらしい、サラサラのポニーテールを揺らして彼女は笑顔で去っていく。

 ジムに通う人は、自分とは違う世界の人だと思っていた。

 ストイックだったり美意識が高かったり、そんな人たちの中に入っていくのは正直気後れしていたけど、実際には気さくで感じの良い人が多かった。

 悠貴の言っていた通り、トレーニングをする仲間同士という意識がジム全体に広がっていて、私みたいに体型に自信のない初心者でも居心地が良い。

 スタッフさんや利用者さんもみんな優しくて、マシンの使い方やおすすめのウェアブランドなどを教えてくれた。

 ――そして、色々話していくうちに悠貴のことも教えてくれた。

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