婚約破棄されたぽちゃOL、 元スケーターの年下ジムトレーナーに翻弄されています

 悠貴とひとつになるまで、あと少し。

 覆いかぶさるようにベッドに縫い付けられて、唇を食まれていた。

 寒いかもと思って、強めに暖房をつけたのがいけなかった。
 首や胸を伝う汗は、最早どちらのものかわからない。

「んっ……」

 いつの間にかキスは耳元に及んでいて、時折甘く噛まれてピリッと痛みが走る。
 そう言えば、前に首筋を噛まれたこともあった。

 悠貴には噛み癖があるらしい。

「……瑠衣さん、いい?」
 
 耳に唇を近づけたまま、悠貴が聞いてくる。
 お腹の下の方に指が滑っていくのを感じて、緊張で身が強張る。
 
 すると、おでこに張りついた前髪を優しくかき分けられた。
 露わになったそこに、チュッと音を立ててキスをされる。

「大丈夫、痛くしないから」

 初めての女の子を扱うような言葉に、一気に胸が高鳴っていく。
 あやされるように、目尻や頬にしっとりとキスが降ってくる。

 ……こんなに優しくしないでほしい。
 
 これは別れてもお互い頑張るための、思い出作りのセックスなのに。
 悠貴の手つきや声が甘くて、次を望んでしまう。

「あっ……!」

 下の方の、弱いところを指でそっと撫でられる。

「そのまま力抜いてて……うん、上手」

 受けるであろう少しの痛みと快感を予想して、体の力を抜こうとしたその時――

 玄関のチャイムが鳴った。
 さっきまで悠貴にどろどろに甘やかされていたのに、一気に現実に戻される。
 
 鳴り続けるチャイムにこれ以上続きをするわけにもいかなくて、そろそろと悠貴の下から這い出しベッドから降りて服を探した。
 
 足に力が入らなくてよろけてしまって、腕を掴まれる。

「……こんな時間に来るやついんの?」
「ごめん、多分……弟……」

 彼氏と別れてから、玲央はたまに家を訪ねるようになった。
 捨てられた私を心配してくれているんだと思う。

 玲央とは仲が良いし、ふらっと来て話をしていくぶんには全然構わないのだけど、今日のところはタイミングが悪すぎる。

「あいつ……」

 チッと盛大に舌打ちをした悠貴が、乱暴に服を着始めた。

「瑠衣さん寝てなよ、俺が出るから」
「え、いやそれはまずいんじゃ」

 私的にも、きっと悠貴的にも、玲央にこんなところを見られるのは気まずすぎる。
 玲央だって戸惑うはずだ。

「いるのすぐにバレるだろ。別にバレてもいいし」
「でも……!」
「いいから! そんな顔で人前に出んな」
「え?」

 ドレッサーの鏡に映った自分の顔を見て、バッとすぐに目を逸らす。
 自分がこんなに物欲しそうな顔をしているなんて、知りたくなかった。

 でも、仕方がない。
 一番いいところで、欲しいものが得られなかったのだから。

「顔洗ってきたら?」
「……はい」

 そうしたところで、体に残る疼きが何とかできるとは思えなかった。

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