婚約破棄されたぽちゃOL、 元スケーターの年下ジムトレーナーに翻弄されています
「いや~、まさか悠貴が来てるとは思わなくてさ~。……めっちゃ仲良くなってんじゃん」
リビングの小さなテーブルを囲む私含め三人には、どこか気まずい空気が漂っていた。
「あのっ、雨がひどくて、それで送ってもらって、ついでにお茶でもって」
「あ、ああそっか、雨ね!」
いくら玲央でも、さっきまで私たちがなにをしていたかわからないほどバカではないと思う。
というか、私がうまく隠せていないだけかもしれない。
悠貴はというと、彼はいつも通りで少し機嫌が悪そうに見えるだけだった。
ぎこちなく笑い合う、玲央と私。
しかし耐えられなくなったのか、しばらく目を泳がせた玲央がおずおずと口を開いた。
「いやほんと、こんなことになってるなんて思わなくてさ……」
「え?」
「ごめん……、俺邪魔だったよね……?」
「いや、全然! 私たちそんなんじゃないから!」
食い気味答えると、向かいに座っていた悠貴にチラリと見られた。
不満そうな顔だ。
心の中で、静かに「ごめん」と謝った。
玲央に打ち明けるのが恥ずかしいとか気まずいとか、それだけじゃない。
ここで悠貴のことを好きだと言ってしまえば、きっと彼はカナダへ行くのをやめてしまう。
最初から、悠貴を家に上げた理由は決まっていた。
これからの関係を作っていきたいとか、好きな気持ちを伝えるためではない。
――お互い離れても頑張れるような、思い出づくりだ。
「……帰る」
悠貴は静かに立ち上がると、玄関の方へ歩いていってしまった。
玲央を残したまま慌てて追いかけ、靴を履いている悠貴の後ろ姿に話しかける。
「あ、あの。ありがとう、送ってくれて」
一瞬動きを止めた悠貴が、こちらを振りかえる。
「うん」
その顔が、少し傷ついているように見えた。
思わず近くまで行こうとして、グッとこらえる。
……これで良いんだ。
悠貴の夢を応援するために身を引くのが、大人の自分がしてあげられることなんだ。
そう思って気持ちに蓋をしたはずなのに、悠貴が静かに玄関を出ていった後もしばらくは動けなかった。