二次元彼氏がいるのでリアルな恋は遠慮します
01 真夜中のロータリー
『次は終点、✕✕駅。お降りの際はお足元にご注意ください』

 電車の揺れと車内アナウンスの声で、ハッと目を覚ます。
 まだ覚醒しきっていない目が捉えたのは、窓の外を流れる見慣れない風景だった。

「あ、れ……?」

 人がまばらになった車内で小さく声を漏らし、扉の上に表示されている駅名を眺める。
 そこには馴染みのない駅名が表示されていて、私は声にならない悲鳴を上げた。

「……!?!?」

 ――やった、やってしまった。完全に寝過ごした……!!

 慌てて体を起こして、膝の上に置きっぱなしにしていたスマホを手に取る。

 時刻は午前一時前。
 画面を開くと、そこには寝落ちする前にプレイしていた乙女ゲームのキャラクター、夢見蒼空(ゆめみそら)の穏やかな表情。

 私の心境とは裏腹に柔和な笑みを浮かべるキャラクターに、私――芳野菖蒲(よしのあやめ)は深くため息をついた。

「さいっあく……」

 六年も社会人をしていて、こんなことは初めてだ。

 華の金曜日。部署内の親睦を深めるためにと開かれた飲み会があったとはいえ、今日みたいに酔い潰れて寝過ごすことなどなかったのに。

 目の前の現実を受け止めきれず、顔面蒼白のまま鈍く痛む頭を押さえていると、右横がもぞりと動いた。

「あ、やっと起きました? おはようございます、芳野先輩」
「……は?」

 見知らぬ人――ではない、私でもよく知っている会社の後輩、桐島奏斗(きりしまかなと)くんがこちらを見下ろしている。

 長めの前髪と黒縁眼鏡、その奥から覗く瞳は真っ直ぐこちらを向いていて、私は頬を引き攣らせた。

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