恋するお弁当箱
「すみませんが、静谷さんは今どちらにいらっしゃいますか?」
「静谷がどうかしましたか?」

「こちらに歩いて来ているのが映っているのですが、戻った様子がありません。この先にはなにがありますか?」
「倉庫です。静谷さんは狭いところが苦手なので、自分で行くとは思えません」
 賢翔は課長と顔を見合わせたあと、倉庫に走っていた。
 がちゃがちゃとノブを回すが、開かない。

「鍵をとってきます!」
 課長がそう声を上げて小走りにフロアに戻る。
 賢翔はドアを激しく叩いて声をかける。

「咲穂さん、いたら返事をしてください」
 だが、返事はない。
 今ここに、彼女が閉じ込められているかもしれない。どれだけ怖い思いをしているだろう。賢翔には想像ができない。だが、あれだけ解放感のあるエレベーターですら苦しそうにしていた。圧迫感のあるこの通路、物の溢れた倉庫。彼女が苦しんでいると思うだけでいてもたってもいられない。

 鍵を持って戻って来た課長は鍵穴に鍵を挿そうとしたが、挿さらずに首をかしげる。
「おかしい、なんで入らないんだ?」

 賢翔は座って鍵穴を確認する。穴にはなにか細い棒のようなものが入り込んでいた。これでは鍵は挿せない。
 舌打ちした賢翔は手に持ったタブレットを見た。これはここに来る前にデータのバックアップをしたばかりだ。

 そして、今ほかに仕えそうなものはない。
 賢翔はタブレットをふりあげ、その角をドアノブに叩きつけた。

「なにを!」
 課長が驚きの声をあげる。
< 37 / 45 >

この作品をシェア

pagetop