29歳新人女性弁護士 超イケメンハイスペックな先輩に溺愛されちゃいました♡
6 姫になる時

「恐れ入りますが、お引き取り願えますか?」

八月も後半に入ったが、暑さが一段落する気配はなく、残暑と呼ぶにも程遠い気候が続いていた。

盆が明けて華恵が戻ってきてからも、レイナはそれ以前と態度を変えることなく、相変わらず秘密を守り抜いていた。

自分は一体、どうしたいというのか。

藤川に対する結論もいまだに出ていない。

こんなことで悩んでいる場合ではないはずなのに、気分が塞ぎがちになり、なんとなく気力がなくなってしまう時間がぼちぼち出てきてしまった。

ダメ、ダメ。そんなことでは。

あんなに頑張ってこのバッジを手に入れたんだ。

早く家族とさよならしたいんでしょ。

だったらとにかく仕事が第一だし、それ以外のことは、横に置いておくべきじゃない。

精神が錯乱しそうになると、レイナは鏡に映る自分にこう言い聞かせる。

だが、レイナの決意もむなしく、最悪の事態が起きてしまう。

その日は、田森の妻が体調不良のため出勤ができず、雑用を華恵一人がこなさねばならなかった。午後に藤川宛てに来訪者があったのだが、ちょうどお茶を切らしてしまっていることに気づいたのが、この日の朝であり、華恵が買い物に出ざるを得なくなった。
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