【WEB版】「無価値」と捨てるのは結構ですが、私の力は「本物」だったようですよ? ~離縁された転生令嬢、実は希少魔法の使い手でした~

31 エピローグ ~十九歳、家族と一緒に~

 バルナーク領に戻ってきた私たち。
 数日、領地を空けたので皆が心配していたようだ。
 リーフはもう泣きはしなかったけれど、すぐに抱きついてきた。

「おかえり! アーシェラお母様! フィンお父様!」
「ああ、ただいま、リーフ」
「ただいま、リーフ」

 フィン様のことも、私のことも、大切な人だと思ってくれているのだろう。
 それがとても嬉しかった。

 領地に帰ってきた私たちは、日々忙しくしながらも二人の時間を取る。
 話題は多岐に渡り、主に領地のこと。そして、リーフのことだ。

「リーフ、騎士に憧れているんですって」
「騎士、かぁ。いや、それは……うん」
「ふふ、きっかけはフィン様ですよ? 間違いなく」
「やっぱりそうなのか」
「ええ。フィン様はリーフの憧れですから」

 フィン様は若き伯爵だが、この地を守る武人でもある。
 なので、日々の鍛錬は欠かしていない。
 庭で槍や剣を振るう鍛錬の光景はよく目にする。
 そんなフィン様を格好いいと思ったリーフは自分も騎士になると言う。

「だが、確かに年齢を考えると進路を決めるのは、そろそろ……」

 私とリーフは教会で改めて親子として認めてもらっている。
 だから、私とフィン様が正式に結婚したあとは一応、リーフは伯爵令息だ。
 でも、基本的にはリーフに次代のバルナーク伯爵を継ぐ資格はない。

 この先、もしかしたら私とフィン様の間に子が生まれるかもしれない。
 そうしたら、間違いなくその子が次期伯爵となるだろう。
 そうなった時、リーフは自分の人生をきちんと選んでいないといけない。
 ただ、一農民よりは各段に『騎士』になりやすい身分になると思う。
 もし、憧れているだけでなく、騎士の資質があるのなら。

「リーフは騎士の才能があると思うよ。それに意外と器用なんだ」
「そういえば、運動神経がいいですよね、リーフ」

 チャンバラをしている光景や、アイススケートをしていた姿を思い出す。

「ああ、まだ体ができていないから過度に鍛えさせてはいないが、いろいろと細かな知識を与えていて、それが身についてもいると思う」

 前世でいうとキャンプでやりそうなことを、いろいろとリーフに教えているフィン様。
 その姿は、まさに父親と息子といった様子だった。

「文字の読み書きや算術もアーシェラが教えてきたんだろう? 身長も伸びてきているし、悪くないんじゃないかな」

 奇しくも私が育てることになったことで、ただ農村で暮らしているだけでは得られなかった教育を受けているリーフ。
 フィン様への憧れもあり、本人のやる気もある。
 成長していくリーフェルトくんに嬉しいところもあり、いつまでも子供でいてほしいなんて気持ちもあり……。
 ううん、やっぱり彼の成長を喜ばないとね。

「そうですね。リーフにやる気があるのなら、その道を選べるようにしてあげてほしいです」
「ああ、もちろんだ。俺もリーフには立派に成長してほしいからね」
「ふふ、フィン様はそう言ってくださると思いました」

 出会った頃は、今にも消えてしまいそうだったリーフ。
 でも、今は騎士を目指して、将来になりたいことを夢見て、日々を笑って生きている。
 こんなに嬉しいことはない。
 私の自慢の息子だ。

 また月日が流れる。
 本当にあっという間だ。季節は再び春になった。

「おいしいねぇ」
「ふふ、そうでしょう?」

 トマトを丸かじりしながら、笑い合う私たち。
 私とリーフ、フィン様で少し遠出をしてピクニックだ。
 レジャーシートとはいかないが、大きな布を敷いて、その上に食事を広げる。
 伯爵家の親子というより一般人の家庭に見えるだろうな。

 どうして遠出をしてまでここに来たかというと桜を見たかったからだ。
 私の【植物魔法】で生やしたものじゃあない。
 きちんとこの国に生えている桜の木。
 つまり、今日は家族で〝お花見〟にやって来たのだ。

「こういうことも風情があっていいものだね」
「ふふ、そう言っていただけると嬉しいです」

 お花見という文化は、日本と海外では(おもむ)きが違うらしい。
 日本のあの宴会みたいな雰囲気でのお花見は、この国の文化にはない。
 二人が楽しめるか不安だったけれど。意外とこの雰囲気は悪くないようだ。
 同じようなお花見客が他にいないというのもあるかもしれない。
 静かな、親子だけのピクニックの時間ね。

「アーシェラ、リーフ。俺は、キミたちと出会えて、本当によかった」
「僕も!」

 フィン様がしみじみと呟く言葉に、リーフは元気に同意した。

「ふふ、きっとこれが幸せっていうのでしょうね」

 私は二人に向けてそう呟いた。
 リーフとフィン様は笑顔になって私に応えてくれる。
 ──ああ、本当に。
 私はとても……幸せだ。
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