ハニートラップ

大丈夫、多分ちゃんと笑えてたし、未練がましくもなかった。

道も知らないのにでたらめに走って、何個目かの角を曲がって立ち止まる。
しゃくり上げそうになったのを歯を食いしばって堪えて、目を閉じて深く息を吐き出した。


まだ生々しく残る高峰くんの体温を抱き締めるように、ギュッと自分の両肩を抱く。
ズキズキと胸が痛むのは、どうしたって治らなかったけど。


目を開ける頃には、前を向く。


――ちゃんとするって、決めたから。
< 139 / 162 >

この作品をシェア

pagetop