ハニートラップ

――――
――……

空き教室の中に入ると、高峰くんの手で静かにドアが閉まる。

瞬間、手を引かれる。
それに抗わず、私は高峰くんの腕の中に飛び込んだ。


「ねぇ、――嫉妬したの?」


光を遮る段ボールの影で、私は高峰くんに抱き締められている。

色のある声とストレートな問いに、全身がじわりと熱くなった。

「…………っ、」

答えられない。
代わりに、初めて私も高峰くんの背中に腕を回す。

ぐちゃぐちゃな感情が、そのまんま溢れ出そう。
高峰くんの体温が滲むワイシャツを、ギュッと掴んで歪ませた。

「珠桜。」

優しく私を呼ぶ声に、そっと顔を上げる。
熱っぽい私の崩れそうな顔を見て、高峰くんは満足そうにその頬を撫でた。


「――答えないなら、珠桜からキスして。」


ドクンと心臓が大きく波打つ。
頬に当てがわれた手の指が、焦らすように私の唇に触れた。


余裕な微笑みと、優しい仕草。
伝わる体温に、心を全て奪われる。

息すら上手く飲み込めない。

心臓の音を耳の奥に聞きながら、そっと背伸びをして距離を失くした。


――重なる瞬間、高峰くんに力一杯抱きしめられる。


そしたらもう、

何にも考えられなくなった。



** Obsession/執着 【complete】

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