ハニートラップ
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電車を降りて、少し栄えた駅に着いた。
改札口のすぐ側で、高峰くんはアンニュイな顔をして立っている。
私服だと制服に抑制されてた色っぽさが際立って、とても同い年には見えない。
目にかかる前髪から覗く気だるげな目元とスラッとした立ち姿に、道行く女の人達が思わず振り向いている。
「た、高峰くん……。お待たせ。」
声が上擦った。なんか緊張してる。
「全然待ってないよ。」
ベタな台詞も高峰くんが言うと、胸キュン台詞になるらしい。
甘いドキドキに落ち着かなくなって、唇をキュッと噛み締めた。
高峰くんが歩き出したのを、小走りで追いかける。
途中で歩く速さが違うのに気付いて、高峰くんは歩く速さを緩めてくれた。
12月に入って、街にはクリスマスムードが漂っている。
街灯を飾る金色の装飾や、ところどころに設置されたクリスマスツリーが、浮ついた心を一層ふわふわとさせていた。
「寒っ。最近急に冷え込んでない?」
高峰くんはマフラーに顔を半分埋めながら、シュッとした目元を更に細くする。
私はキョロキョロしているのに、高峰くんは前しか見ていないから、クリスマスにはあまり関心はないみたいだ。
「ね。でもそんなに嫌いじゃないな、私は。」
「へー、変わってる。」
「そうかなぁ。」
会話終了。高峰くんとの会話はいつも、表面をなぞるだけで話題が切り替わる。
冷たい澄んだ空気が肺を満たして、吐いた息は白く見える。
話題を変えることにした。