ハニートラップ
「冬休みさ、どうする?」
耳元で甘やかす様な囁く声。
高峰くんの吐息が耳にかかる。
ドクンと心臓が跳ねて、落ち着かない。
高峰くんの制服の裾を握ってなんとか堪えた。
「どうするって言うのは……」
――会ってくれるってこと?
「どうやって会おうかなって。
さすがに夜中の散歩は寒いでしょ?」
疑問を先取りして、当たり前の様に言われた言葉にキュンとする。
「……だね。
そう言えば、高峰くんの家ってどこなの?
いつも来てくれるし送ってくれるけど……」
高峰くんが当たり前の様にしてくれてるから、疑問に思う隙がなかったけど。
実はすごく遠くに住んでて、今まで無理してたわけじゃないよね?
「学校から見て、珠桜の家と逆方向。
……徒歩圏内だよ。」
あ、そうなんだ。
その解答にホッとしかけて、すぐに“いや、待て”とハッとする。
高峰くんの肩を押して距離を取り、涼しげにしてる綺麗な顔をまじまじと見た。
「そしたら高峰くん、すごく遠回りしてくれてるんじゃない?毎日毎日。」
「まぁ、珠桜の家からだと1時間かからないくらいだね。」
やっぱり!
さらっと言ってるけど、ものすごく無理させていた。
「ごめんね、高峰くん。
今まで気づかなくて、当たり前の様に……」
申し訳なさにシュンと眉尻を垂らす。
高峰くんはそんな私を不思議そうに見つめて、でもまたすぐに綺麗な笑顔に戻った。
「いーよ、ダラダラ歩くの好きなの。俺。
ダルい日は電車とかも使うし。」
ふい、と明後日の方を見ながら、高峰くんは淡白に言う。
その横顔は相変わらず綺麗なのに、ちょっと近くに感じた。
(……そうだったんだ。)