エリート弁護士は秘密の双子ごと、妻を寵愛する
3・トラブルの解決と、身ごもり勘違い(過去編)
 弁護士さんの偽彼女になってから、私の人生は暗黒から薔薇色に変化した。

 週に5日、最寄り駅から自宅までの帰路を彼と2人で手を繋いで並んで歩く。
 会話はしたりしなかったりと日によってばらつきはあるが、大門寺さんの姿を見るだけで、不審者なんてどうでもいいと思えるくらいに幸せな気持ちでいっぱいになった。

「あちらは随分と、澄花に執着しているようだな……」

 彼氏ができたら恋愛対象から外れるんじゃないか――。
 そんな弁護士さんの思惑は外れ、変質者はいまだに私達の後ろをひたひたとくっついてくる。

 手紙の投函も続いているが、中身を確認するのは止めた。
「内容を目にしたら、気味が悪くて捨ててしまうだろう」と大門寺さんが危惧した結果だ。

 ――優先するべきは証拠保全。
 あとをつけられた時間を記録し、示談交渉に備える。

 でも……。
 私が変質者のターゲットから外れたら、弁護士さんが偽彼女としてそばにいる必要はなくなってしまう。

「電話番号から身元を割り出すまでは、時間がかかるんですよね……」
「ああ。最短で3か月。1年以上かかることもある」
「そんなに……」

 ――いずれ訪れるべき未来のことを考えるだけでズキズキと心が痛むなんて、おかしいよね。
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