エリート弁護士は秘密の双子ごと、妻を寵愛する
「冗談だ」
「もう……っ。驚かせないでください……!」
「ごめんな」

 マンションのエントランスに到着し、オートロックを解除する。
 ここから先は、安全だ。
 大門寺さんは歩みを止め、ゆっくりと手を離す。
 私はその様子を見計らい、勢いよく頭を下げた。

「今日は本当に、ありがとうございました……!」
「また明日」
「は、はい……っ!」

 彼は優しく口元を綻ばせると、こちらにひらひらと手を振った。
 私はくるりと身体を回転させ、ロビーを歩く。
 そうして、後ろを振り返ることなくエレベーターへ乗り込んだ。

 ――かっこよかったなぁ……。

 先程まで繋いでいた指先が、今もまだ熱を持っている。
 私はそれを口元に当て、四角い箱が目的の場所についたあともしばらくそこから動けなかった。
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