エリート弁護士は秘密の双子ごと、妻を寵愛する
 ――やはり、彼女と結婚するしかないのか……?

 親が敷いたレールの上を走行し続けたくないのに、それが自分の唯一幸せになれる方法かもしれないと結論を出しかけた時だった。

『うちのお店の従業員ちゃんが、半年以上ストーカー被害に遭って困っているの。相談に乗ってくれないかしら?』

 僕が電話で叔母の紹介を受けたあと、あの子と出会ったのは。

「五月雨、澄花と申します……」

 完全に、一目惚れだった。
 自信がなさそうに視線を逸らす姿は庇護欲を駆られ、必要以上に自分を責める言動が、「彼女を1人にしてはいけない」と強く思わされる。

 業務外に「依頼人の手助けをしたい」と申し出るなど、あり得ないとわかっている。
 なのに――。
 僕は半ば強引に偽彼氏となることを認めさせ、距離を縮めた。

 ――退勤後、最寄り駅から自宅までの護衛は、毎日が夢のようだった。

 後ろから変質者の恨みがましい視線を向けられても、痛くも痒くもない。
 少しでも愛する彼女を安心させてやりたい一心で世間話を続ければ、最初は申し訳なさそうにしていた澄花もだんだんと心を開いてくれた。
 彼女に対する愛おしさが増す度に、許嫁と曖昧な関係を続けるのはよくないだろうと思い直す。
< 65 / 162 >

この作品をシェア

pagetop