エリート弁護士は秘密の双子ごと、妻を寵愛する
「僕は弁護士として生きる。父さんの会社を発展させるための駒になるつもりはない。葵との結婚話は、なかったことにしてくれ」

 僕は正式に父親の会社は継がないと啖呵を切り、葵との関係を断ち切った。

 澄花との関係が進展したのは、それからすぐだ。
 開示請求の結果、彼女を追いかけ回していた男が警察官僚の弟だと明らかになった。
 僕が間に入っても被害届を提出するのに難色を示されたのは、上から圧力がかかっていたと考えるべきだろう。

 ――このまま強引に事を荒立てたところで、澄花の社会的地位が脅かされるだけだ。
 予定通り示談に持ち込むべきだろうと考え、今後の方針を彼女に伝えようとした矢先のことだった。
 変質者の兄が直談判にやってきたのだ。
 僕は彼女と対処に当たったあと、想いを通じ合わせた。

 偽彼氏から、普通の彼氏になる。
 願ってもみない状況ではあるが、それだけでは足りないと思った。

 母親は僕の意思を尊重すると約束してくれたが、自分本意な考えを持つ葵は「どうして今さら許嫁を辞めるのか」と納得がいかない様子で声を荒らげていた。
 元許嫁を納得させるためには、僕達の仲を祝福するしかない状況を作り出すのが一番だ。

 ――このまま僕の子を、孕んでしまえばいいのに。

 そんな打算をいだきながら、幸せな一夜を堪能した。
 まさかこの選択が2人の道を分かつことになるなど、思いもしないまま……。
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