こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜

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 途中までは順調だったのにな。
 遥は右足に貼られた大きめの絆創膏を見ながら溜息をついた。
 
 せっかく無傷だったのに、飛び散ったグラスの破片がドレスのレースに引っかかっていたことに気づかず、車に乗った時に切ってしまったのだ。
 ガラスの破片が身体に残ったらいけないと心配してくれたのはありがたいけれど、たいしたことないのに病院まで連れて行かれ、消毒と絆創膏は恥ずかしかった。
 
 隼人の電話は先ほどから鳴りっぱなし。
 伊集院製薬との取り引きだけではなく、あの場にいた多くの会長・社長たちにM-ADCとの契約を打ち切られたらどうしよう。
 私はツクモのことしか考えていなかった。
 やっぱり庶民があんなパーティに行ってはいけなかったのだ。
 遥はリビングのふかふかソファーに埋もれながら、大失敗だったなと大きなクッションを抱きしめた。
 
「コーヒーでも飲むか? それとも酒か?」
 やけ酒するなら付き合うぞと笑われた遥は、クッションから少しだけ顔を出しながら隼人を見上げた。

「今日はごめんなさい」
 そのあとの言葉は上手く出てこない。
 途中までうまくいっても、結局最後は百までひとつ足りずに残念な結果で終わってしまういつもと同じ自分に、遥の気持ちは沈んだ。

「伊集院社長の孫とは面識がなくて。防げなくて悪かった」
 遥の隣に座りながら弁解する隼人の言葉に、遥は抱きしめたクッションをガバッと引き離す。
 
「……面識がない? は? 嘘でしょ?」
「本当だ。そもそも伊集院社長に会うのも数年ぶりだ」
 孫娘がいることも知らなかったと肩をすくめた隼人に、遥は目を見開いた。

「待って。完全に彼女の片想いで、私はやられ損ってこと?」
 だから彼女は『将来を誓い合った』ではなく『将来を誓い合うと決まっている』という変な言い回しだったのだ。
 片想い程度であんなことまでするなんて、お嬢様ってどれだけ甘やかされているの?
 
「あの子もびしょ濡れにしてやればよかった」
 化粧室の洗面の蛇口を指で押さえて水を飛ばせばよかったと真剣に悩む遥を、隼人は笑う。

「今度やり返せ」
「やり返してもいいの?」
 本当にやっちゃうわよ。
 
「今日は伊集院社長のために我慢してくれたのだろう?」
 大人の対応だったなと褒められた遥は、なんだか少し照れくさかった。
 
 隼人のスマートフォンが鳴り、今度は英語で挨拶をしている。
 こんなにハイスペックなのだから、片想いする子くらい出てきてもおかしくないなと妙に納得してしまった。
 だからって私に水をかけたり突き飛ばしたことは許せないけれど。
 
「モテる男は大変ね」
 とても日本人とは思えない発音で流暢に英語を話す隼人を見ながら、遥は肩をすくめた。

    ◇

 水ぶっかけパーティから一週間。
 小さな雑居ビルに現れた山本製薬の会長の姿に、ツクモソフト社内はプチパニックになった。
 山本会長は自らCMに出演し、薬の安全性をアピールされている有名人だ。
 狭い社長室に案内し、使い古されたソファーに座ってもらったが、違和感がすごかった。
 
「広告収入!?」
 遥は山本会長からの思わぬ提案に耳を疑った。
 
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